現役通訳ガイドのフランス留学

2007年からフランス語の通訳ガイドとして日本全国を飛び回っています。ガイド歴11年目の今年、9か月休業してフランスに留学することに決めました。せっかくなので、ガイド目線で、留学先・リヨンの学校やホームステイの様子、フランスのツーリズムの状況などを綴っていきます。日本のインバウンドに携わっている方、通訳ガイドを目指している方、フランス語を勉強している方、今さら留学(?)をお考えの方などに、ぜひ読んでもらいたいです!

『この世界の片隅に』

前回の記事でご紹介したMaryvonneさんから、Cine-Clubで、日本の映画の上映会があるから一緒に行きましょう、とお誘いがありました。

その映画が、ご存知のこれです。f:id:chezmizuka:20171111053426j:plain
日本では昨年(2016)公開。
ミニシアターで始まった、このアニメ映画が、今や世界の50ヶ国以上で上映されるようになるとは、誰も想像しえなかったのでは!

私自身、日本では特に観るつもりもなく、ましてやフランスで観ることになろうとは、思いもよりませんでした。

しかも、今回は、プレゼンター(フランス人です)がいて、(この方がまた、非常に日本映画に詳しい)、上映後は、観客席に座ったままで、観客が自由に感想や意見を交わすという、大きなおまけつき。

私は、フランス人の反応に興味津々だったので、しばらく彼らの感想を聴いていたのですが、、、

だんだんガイド根性(?)が出てきて、どうにも抑えられなくなり、とうとう、

「皆さんの中で、広島を訪れたことはある方はいらっしゃいますか?」

と問いかける形で割って入ることに(^^;

すると、30数人くらいの中で、5人ほどいらっしゃいました。
続けて、自分がガイドであること、フランス人観光客をしょっちゅう広島に案内していること、広島の資料館の展示のしかたと、この映画での描かれ方の相違、この映画のリアリティー(当時の生活にかなり忠実であること)、この映画の資金繰りの話、原作者のこうの史代さんのこと などをしゃべりました。

こう書くと、立派に話しているように聞こえますが、実際はさにあらず。
いてもたってもいられなくなり、考えもせず話し始めてしまったので、フランス語的にもイマイチ。話しているうちに、どこに話を着地させるべきか、(わ、ヤバい、と思いながら) 最終的に、
「(フランスの)アヌシー映画祭で賞をとったことを機に、このような映画館での上映にいたり、感謝しています」
と、わけがわかるような、わからないような締めになりました💦

あー、あとから、もっと伝えたいこと、もっと上手く伝えられたことがあったのに、と悔やまれましたが、、、

まぁ、皆さん、ナマで日本人が発言していることに、少なからず驚嘆し興味を持って聞いてくださっていたので、よしとするか、、、

皆さんの感想としては、

  • 日常を描きながらも、示唆するものがある
  • しかしながら、自分たちのように風刺的なスタイルではない(ところが日本的)

といった感じでした。

映画の意図はちゃんと伝わっていると確信しましたが、日本における太平洋戦争、当時の暮らし、そして何より広島の惨状を、ここにいる中で一番よく知っているのは私であり、この胸のなんともいえない感情を、これほどまで感じている人は、やはりいないのではないか、と切なくなりました。


いずれにせよ、思いがけない展開で、こうした上映会に居合わせることになり、貴重な経験になったことには間違いありません。

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